日本は製造業で生きて行くのか?

日本の長い不況から抜け出す為には、外需頼りから脱却し、内需に移行しようとずいぶん前から言われています。
この時に、イメージされるのが、2次産業である製造業から、3次産業のサービス業への移行でしょう。
でも、本当に日本の産業構造を変えないといけないのでしょうか?

製造業に未来は無い?

日経ビジネスとダイヤモンドオンラインがあるが、今日、目に付いた2つの記事がありました。
一つは、ダイヤモンド社の記事で、広瀬隆雄の「世界投資へのパスポート」。
「アメリカは競争力がなくなった」はウソ!経済構造がシフトし、デフレはむしろ歓迎
ダイヤモンド・ザイ・オンライン 2010年2月22日

1.アメリカで、ドキッとするようなニュースが出ている
2.アメリカではデフレを歓迎する風潮がある
3.デフレを歓迎する理由は、すでに経済構造のシフトが終わっているため
4.競争力を貿易収支だけで測ることは危険

 それは、アメリカでは個人消費が経済全体の7割近くを占めているため、「モノやサービスの値段が安くなるのは大歓迎だ」という意見が多数派であるからです。

 アメリカではもう「モノづくり」が遠い過去の話になっており、企業の側も「メーカー」という自覚がなくなっているのかもしれません。

 もう1つ重要なことは、2008年の実績で、米国の貿易収支は8400億ドルの赤字となっているものの、ロイヤリティーやライセンス、金融サービス、教育、旅行、リース、エンターテインメントなどマージンの高いサービス貿易では、差し引き1440億ドルの黒字になっている点です。

 しかも、このサービス黒字は拡大し続けています。

 言い換えれば、中国は「薄利多売」のボリューム販売分野に強く、アメリカはソフトウェアに代表されるようなオイシイ部分を中心に勝負するという構図ができ上がっているのです。

この記事によると、アメリカは既に「生産」だけを海外へアウトソーシングしていて、AppleGoogleなど知財で稼ぐ体制になっているそうです。

一方、日経で見つけた記事にはポータルサイトMakers-IN」の永守氏を紹介しています。永守氏はメーカーの強さに触れていますが、単純に国内のメーカーを保護する事を目指している訳ではないそうです。

最後に“穏やかに”笑うのはメーカーだ
日経ビジネスオンライン
永守氏は、HDD用モーターで世界でトップシェアを誇る日本電産永守重信が父である。

 しかし、メーカーとして世界一のシェアを手にした父は、「最後に笑うのは絶対にメーカーだ」と息子に教え、息子も「最後に、“穏やかに”笑うのはやっぱりメーカーだと思う」と語っている。

 「父の言うことが本当かどうかは分かりませんが、少なくとも、最後にハハッと笑っていられるのは、メーカーの工場だと思っています。確かに、プロ野球選手並みに稼ぐことは難しいかもしれません。でも、メーカーはエンジニアから会計士から単純労働をする人から、あらゆる人間の『雇用』を生むことができる。日本経済団体連合会のトップが、メーカー出身のトップではなく、経営コンサルタントになるようでは、その国はもう終わりですよ」

 国内のマーケットが小さい国の製造業は、外へ出ていくしかない。永守は言う。「日本のものづくりが凄いんじゃなく、凄いものづくりをする人がたまたま日本にいるだけなんです。このままいけば、みんな海外へ出て行ってしまいますよ」。

 単に「日本のものづくりを守ろう」という話ではない。むしろ、ものづくりの可能性を日本に限定せず、世界にまで最大限に広げていこうというのが永守の目指すところである。

Makers-INは国内メーカーの取引相手を世界に広げる手助けをするサイトであるが、今後、町工場のような零細企業にも国際的な取引が広がる事で日本の工場が活性化するのか、海外に持っていかれるのか注目される所です。
個人的には、日本の町工場の高い技術力が買われ、完成品だけでなく、パーツでの輸出なども増えるなどして、日本の中小企業が活性化してくれると嬉しいのですが、現状では、なかなか難しいと思われます。

日本の輸出が低調なのは日本に原因があるのでしょうか?

ソニーNECが不調な原因の一つとして、過剰品質が上げられます。が、コレは長所が短所に裏返っただけでしょう。元々日本製品が「神話」化されたのもそこそこの値段で高級品なみの性能だったからです。
「そこそこの値段で高級品なみの性能」を喜んだのは20世紀に台頭してきた中産階級です。富裕層ならば要求する性能を実現させるコストを支払えますし、貧困層は高い性能よりも支払える値段で選択します。
日本製品のお得意様は中産階級でした。ところが、21世紀に入ってグローバル化が始まり、先進国では富裕層と貧困層の2極化が始まり中産階級中流層の数を減らします。一方、新興国では経済が発展したと言う物の、富裕層が増えたのみで中流層が厚くなったわけではありません。
実は、これこそ日本製品の不調の原因があるのではないでしょうか?「そこそこの値段で高級品なみの性能」を欲しがる中流層が居なければ日本製品は売れません。そう考えると、輸出復調のカギは海外の中流層が増えるか否かにあると言えるでしょう。

日本が頑張らないといけない事。

では、今後、中流層は増えないのでしょうか?そうは思えません。民主化が進んでいる新興国では中流層が大きな票田となっているでしょうし、その他の国でも中産階級が大きな発言力を持って来ている事が伺われます。
つまり、日本にとってのお客さんは、今は入替え中の端境期でたまたま客足が途絶えていると考えられないのでしょうか?そうなると、慌てて商売を切替えるよりも「通常価格で高品質」な製品を絶やさない事こそ日本が生き延びる道なのかもしれません。