CSを超えなければCSは生まれない。

プリウスリコールの教訓

今回のリコール騒ぎの中であまり言われていない事の一つは、トヨタ回生ブレーキの認識の浸透がどれ位あったのか見誤ったのではないか?という点ではないでしょうか?

もともとプリウス回生ブレーキは評判が良くありませんでした。その苦情の多くはブレーキの性能ではなく、回生ブレーキを利用することから来る「違和感」でした。(このことは、今回のリコールをうけてさんざん言及されてますよね。)
トヨタの販売力・技術力は、ともにずば抜けているとして有名です。プリウスのブレーキを新しくする会議において、従来のガソリン車との違和感を無くすブレーキの要請があった事でしょう。顧客の要望を報告するマーケティングや営業、高度で繊細な調整が必要な技術に挑戦したがる技術陣。社内の会議で反対意見はほとんど出なかったのではないでしょうか?

顧客満足を追求したが為に不満が生まれる

ですが、ここで我慢して顧客が育つのを待っていれば、これほどの大騒ぎにならなかったのではないでしょうか。回生ブレーキを認識してもらう為に、「いかにもプリウスっぽい」ブレーキの利き方を表現する手もありました。航続距離を伸ばす為、ハイブリッド車や電気自動車は回生ブレーキが必須です。プリウストップランナーだった為にブレーキシステムの違和感を指摘されました。もう少し我慢すれば、回生ブレーキが常識になり、プリウス特有のブレーキ作動に対してのクレームも減った筈です。

ここでの教訓は、カスタマーの希望を無視する事も重要だという事です。この「カスタマーを無視する」のはアップルが得意です。アップルを観察すると2つの方法でカスタマーの苦情をそらしています。

2つのやり方で顧客の不満を誤魔化す
  • 一つ目は、慣れてもらう。
  • 二つ目は、苦情のネタを作らない。です。

一つ目は長年のMacOSの経験から来るものなのかもしれません。Windowsの操作方法に慣れた人が、Macの操作に慣れていくに従って不満を無くしていくのはよくある事です。iTunesでのコンテンツの販売や少品種でのビジネスなど、始めた頃は大いに非難を浴びたものが、いつの間にか受け入れられています。この、慣れてもらう戦略、ゲーム業界は結構得意ですね。子供がメインターゲットなので、説明に工夫を凝らすことが当たり前の思考になっているのかもしれません。

二つ目の「苦情のネタを作らない」事は、トヨタが見らなうべき点でした。しかし、かなり高度な技です。他人の評価を気にしやすい日本人にとっては、特に苦手な方法なのかもしれません。

あえて傲慢の汚名を着る

現在、アップルの新製品「iPad」が騒がれていますが、Jobsは過去にタッチパネルのMacBookについて否定的な発言をしていました。その時点で性能的には十分実現可能でしたが、顧客が満足できる製品が出せないと判断していました。カスタマーの希望をかなえる為に出した製品があたらなクレームを呼び寄せると分かっていたのです。ここはアップルというよりもJobsの功績なのかもしれませんが、顧客が満足できる品質になるまでメニューに載せない事は、実践するのは至難の業ですが、とても重要な事です。

本当の顧客目線を実践するには顧客を「無視」しない出来ないというお話でした。